第5回 2018 都市・まちづくりコンクール

レポート

第5回 2018 都市・まちづくりコンクール ダイジェスト映像

第5回 2018 都市・まちづくりコンクール

名称 第5回 2018 都市・まちづくりコンクール
審査・表彰 平成30年3月13日(火)
会場 明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント 1F
審査員/
実行委員

<審査員長>

  • 小林 英嗣/北海道大学名誉教授・日本都市計画家協会会長

<審査員>

  • 中野 恒明/芝浦工業大学名誉教授・㈱アプル総合計画事務所主宰
  • 江川 直樹/関西大学教授
  • 角野 幸博/関西学院大学教授
  • 柴田 久/福岡大学教授
  • 川口 とし子/長岡造形大学教授・㈲アーキスタジオ川口一級建築士事務所

<実行委員長>

  • 小林 正美/明治大学副学長・㈱アルキメディア設計研究所主宰
主催 総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会
共催 明治大学理工学部建築学科

過去最多の力作集まる

平成30年3月13日、明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント 1Fにて「2018第5回 都市・まちづくりコンクール」が開催されました。本コンクールは、都市計画を研究領域に取り組む学生に「発表の場」、それを「評価する場」、同じ志をもつ学生との「交流の場」の提供を目的として催されています。また、都市計画を主軸とする学生コンクールは全国でも稀有なため、都市計画の研究に携わる学生において、貴重な場となっています。2014年より開催しており、5回目となる今回は「混」というテーマの下、過去最多の106作品がエントリーし、69作品が出展。会場には、多くのポートフォリオ・模型が並びました。

2018年度課題「混」について <コンクールフライヤーより抜粋>

(1)水の盛んに流れるさま。(2)まぜる。まじる。まじわる。 (3)あわせる。あう。(4)もののわかれないさま。けじめのないさま。 (5)大きい。
異なる要素を混ぜると「混乱」を引き起こしがちです。土地利用を純化させて相互に悪影響を及ぼさせないことが、都市計画の常識でした。でもそのことが、退屈で不便な街を作ってしまうかもしれません。逆に、異質の要素が互いに刺激し合い魅力を高め合うことがあります。両者の間に別の新しい「場」が生まれることも期待できます。異質のものが 混じり合って、それぞれの魅力を残しながら「混然一体」となって新しい魅力を生み出すことができるかもしれません。建築のデザインでは、様式の混交や、「混構造」もあります。「混」を否定的にとらえるのではなく、建築や都市デザインの魅力ある「混」のかたちやシステムを提案してください。計画の範囲と規模は自由ですが、建築物および周辺の環境計画を含めた提案を求めます。

出展者立ち会いによる巡回審査

午前中に行われた一次審査は、各審査員が作品を巡回し、学生たちがプレゼンテーションを行う形式。2分という短時間で、計画の背景・主旨・目的を簡潔に説明する能力が求められました。7人の審査員が個々に各ブースを回るなかで、うまく説明できなかった点をノートに書き込み、次のプレゼンテーションに活かそうとする姿や、学生同士で作品・プレゼンの意見交換を行う姿が随所で見られ、発表・評価・交流の場として大いに盛り上がっていました。

最終審査に進む10作品

巡回審査後、審査員による公開投票にて最終審査に進む作品を選定します。一人10票ずつ投票し、より多くの票を集めた上位10作品が最終審査に進みました。

小林 英嗣 氏
(審査員長)

中野 恒明 氏
(審査員)

江川 直樹 氏
(審査員)

角野 幸博 氏
(審査員)

柴田 久 氏
(審査員)

川口 とし子 氏
(審査員)

小林 正美 氏
(実行委員長)

■最終審査選出作品

No 作品名 大学名
No.4 「再編する都市の生態系」 愛知工業大学
(中村 勇太さん)
No.13 「理想への干渉-郊外住宅地の明日を考察する-」 日本大学
(木村 愼太郎さん)
No.22 「アジアンタウン構想-移民1000人の営みでできた建築-」 日本大学
(本田 偉大さん)
No.33 「合法立体路上駐車場」 東京都市大学
(坂本 崚さん)
No.42 「融けだすウラロジ -高架下を起点とした元町再編計画-」 神戸大学
(井上 凌成さん)
No.49 「いままでのいえ これからのまち」 早稲田大学
(鈴木 奈美さん・木内 星良さん・矢尾 彩夏さん)
No.54 「まちにほどける混在郷-インフラ化する庁舎建築-」 日本女子大学
(津田 加奈子さん)
No.60 「さりげない日常を共に生きる」 東京大学
(吉田 聖さん)
No.71 「まちなかのいち:人、もの、情報の集まる場所」 山口大学
(CHOW YI XINGさん・白井 駿介さん・藏薗 悠介さん)
No.76 「こどものまほろば」 東京芸術大学
(稲荷 悠さん)

最終審査は、1つの作品に対し、出展者のプレゼンテーション5分、審査員からの質疑応答10分の合計15分。学生たちは、プロジェクターや模型を使って、計画の目的や計画地の選定理由、特徴を発表しました。審査員から、選定地や計画の詳細について鋭い質問が投げかけられる中、緻密な現場リサーチや研究成果から、自信を持って答える学生が多く、その姿からは作品に対する熱意が伺えました。

プレゼンテーション+質疑応答後、公開投票によって最優秀賞1作品、優秀賞2作品が決定。見事、最優秀賞に選ばれたのは、最も票を集めた東京芸術大学の稲荷悠さんの作品「こどものまほろば」。審査員から「その土地に足りないもの、子供たちという要素を入れることで、今回のテーマ『混』を完成させようという意欲が感じられた」と高い評価を受けていました。

選出された各賞は以下の通りです。

■入賞

最優秀賞

「こどものまほろば」
東京芸術大学  (稲荷 悠さん)

敷地は小田急線下北沢駅~東北沢駅のエリア。こどものヒューマンスケールを伴った、街と保育の場が融合する空間を提案した作品。

写真1

写真2
写真3
優秀賞

「理想への干渉-郊外住宅地の明日を考察する-」
日本大学(木村 愼太郎 さん)

千葉ニュータウンを舞台に「かつてのM1※が既存住宅に寄生し、混在を受け入れることで次の時代を生き抜く未来」を構想した作品。

※積水化学工業 住宅カンパニーが1971年に開発した鉄骨ユニット住宅の初代モデル「セキスイハイムM1」

写真1

写真2
写真3
優秀賞

「まちなかのいち:人、もの、情報の集まる場所」
山口大学(CHOW YI XINGさん・白井 駿介さん・藏薗 悠介さん)

山口県宇部市中央町において、まちなか再生計画を立ち上げ、現在衰退中の中央町に再びにぎわいと活動を呼び戻すための複合施設を提案した作品。

写真1

写真2
写真3
総合資格学院賞

「いままでのいえ これからのまち」
早稲田大学(鈴木 奈美さん・木内 星良さん・矢尾 彩夏さん)

敷地は群馬県前橋市の弁天通り商店街。見守りのある介護環境の中でも、個々に合った暮らし方や居場所の選択肢を増やすことを目的とした認知症のケア環境を計画した作品。

写真1

写真2
写真3

小林英嗣賞
「鉄道民族」北海道大学 (久保 夏樹さん)

小林正美賞
「時を編む巨塔-建築の終焉と新たな神話」東京理科大学(楊 翌呈さん)

角野幸博賞
「融けだすウラロジ -高架下を起点とした元町再編計画-」神戸大学(井上 凌成さん)

中野恒明賞
「『減=加』中国都市城中村再生計画・鄭州市陳寨村」明治大学(鄭 朝陽さん)

江川直樹賞
「共に成る表層」九州大学 (吉村 有史さん)

柴田久賞
「渋滞の道から賑わいの街へ」九州大学(岩水 桂亮さん)

川口とし子賞
「さりげない日常を共に生きる」 東京大学 (吉田 聖さん)

各審査委員総評

【小林 英嗣氏】
審査員を務めた我々は建築をベースに現在の道を選びました。建築を通じて、「どのように幸せに生活していくか」というテーマにあえて足を踏み入れたみなさん。将来、私たちと近い領域で仕事をする一歩を踏み出していることに敬意を表します。都市計画をする際に、今までに忘れられた領域、先輩たちが残した宿題が多数存在します。本コンクールでは、それらに対し、みなさんがどのようにチャレンジしたのか着目しました。「混」というものはこれから都市をつくるうえで大事なキーワードです。今後、多くの機会でみなさんとコラボレートできたらと思いました。

【小林 正美氏】
ものづくりとしては、図面をきちんと描き、模型を製作し、スケッチを描くことをまずは評価します。レベルが非常に高く、プロ的なセンスが感じられました。また、今回のコンクールで特に印象に残ったのは、人に対する態度や優しさです。マイノリティの人たちと共に成長する建築や都市を計画する姿勢に好感を覚えました。その点を高く評価したいと感じました。

【江川 直樹氏】
「混」というテーマについて、今回のコンクールを通じて考えるきっかけになったはずです。このテーマに対し、真剣に向き合うことが一番重要だと思います。みなさんには、ものをつくるというよりも、建築と建築、建築と何かの間に生まれる空間をこれからは考えて欲しいと思いました。そして、つくっていくプロセス自体がみんなを幸せにする空間を提案してくれると期待しています。

【角野 幸博氏】
「混」というテーマに重きを置いて評価しました。混ざり合うことで、異なる要素がくっついたり、離れたりする力により、第三のなにかが生まれるのではないでしょうか。その抽象的なものを具体的な空間としてみなさまがどのように提示してくれるのか期待をしていました。また、まちへの展開をするときに、そのまちの魅力や課題への考え方や、都市計画としての視点、変えていく、支えていく仕組みにも着目しておりました。みなさまの作品からは感心させられるものから、自分ならこうしたいと興味を引くものまで多数あり、楽しい時間を過ごすことができました。

【中野 恒明氏】
本コンクールは卒業設計展とは違うと割りきっています。必ずしもプレゼンテーションのまとまりなどではなく、「都市」というものを的確に捉え、それに対する答えを提案しようとする意欲を高く評価したいと思いました。中心市街地の再生を次の世代、みなさんの世代にどう繋げ成し遂げていくか、大いに期待をしています。

【柴田 久氏】
何を持って「混」と提示するのか。それに対する具体的な空間、建築の提案の一貫性、整合性に着目しました。どの作品も均衡しており、選択するのは難しく感じましたが、既存のものに何か別の要素を混ぜ、新しい価値を創造している作品を評価しました。

【川口 とし子氏】
私は、今回のコンクールが初めての参加となります。学生たちが都市や街を主軸とすることで社会性というものをこれほど強く意識し、これほど前向きな提案・設計をするのだと本コンクール通じて、知ることができました。

各審査員からの総評、表彰式の後、場所を移して、学生、審査委員、関係者による懇親会が行われました。コンクールでは伝えきれなかったことや建築にかける思いなど、熱く語られていました。