第2回 2015 都市・まちづくりコンクール

レポート

第2回 2015 都市・まちづくりコンクール

名称 「第2回 2015 都市・まちづくりコンクール」
開催日 開催期間: 平成27年2月28日(土)~3月2日(月)
トークイベント: 平成27年2月28日(土)
審査・表彰: 平成27年3月1日(日)
会場 芝浦工業大学 芝浦キャンパス
1日目
トークイベント
  • 小林 英嗣/北海道大学 名誉教授・日本都市計画家協会会長
  • 小林 正美/明治大学 教授・(株)アルキメディア設計研究所主宰
  • 有賀 隆/早稲田大学 教授
  • 西村 浩/(株)ワークヴィジョンズ代表取締役
■司会
  • 前田 英寿/芝浦工業大学 教授
2日目
審査会 審査委員
■特別審査員長
  • 小林 英嗣/北海道大学 名誉教授・日本都市計画家協会会長
■特別審査員
  • 小林 正美/明治大学 教授・(株)アルキメディア設計研究所主宰
  • 前田 英寿/芝浦工業大学 教授
  • 西村 浩/(株)ワークヴィジョンズ代表取締役
■審査員
  • 山本 俊哉/明治大学 教授
  • 金尾 朗/昭和女子大学 教授
  • 桑田 仁/芝浦工業大学 准教授
  • 遠藤 新/工学院大学 准教授
  • 中津 秀之/関東学院大学 准教授
  • 小川 宏樹/和歌山大学 講師
  • 土田 寛/東京電機大学教授
  • 中村 純 /(株)大林組 設計本部 プロジェクト設計 部長
  • 田中 健介/(株)日本設計 都市計画群 主管
実行委員長 中野 恒明/芝浦工業大学 教授・(株)アプル総合計画事務所主宰
主催 総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会

今回で2回目の開催となる「都市・まちづくりコンクール」。
これまで「都市」や「まちづくり」を主とする学生コンペは国内でも稀でした。ですが「震災復興まちづくり」や次なる自然災害等への「事前防災学習」に対する学生の意欲が高まる傾向にある昨今、「まちづくり」の考え方を市民や行政などに伝えるコミュニケーション能力の重要性も増しつつあります。本コンクールは、「都市」「まちづくり」といった分野をめざす学生に交流や切磋琢磨する場を提供し、 学生の育成を図ることをコンセプトとしています。
今回のテーマは「際」~EDGE~ 。線路際や堤防際など都市・まちを区切る土木構造物の「際」から、山際や海際など都市・まちのイメージを際立たせる場所性に至るまで、都市・まちの「際」に関わる問題を幅広くとらえ、その課題解決のあり方を考えます。

トークイベント

2月28日(土)には、コンクール前夜特別企画として「まちづくりを担う次世代の力へ」と題したトークイベントが、芝浦工業大学 芝浦キャンパスにて開催されました。パネルディスカッション[パネラー:小林 正美氏、有賀 隆氏、西村 浩氏]と講演[小林 英嗣氏]が主な構成で、実行委員長の中野 恒明氏と司会の前田 英寿氏が進行しました。

小林 正美氏

有賀 隆氏

西村 浩氏

小林 英嗣氏

中野 恒明氏

前田 英寿氏

パネルディスカッションでは、3名のパネラーの「まちづくり」の捉え方と、実務例を紹介しつつ、各パネラーの「学生が今後注力してほしい取り組み・考え方」を学生たちに提案し、これからの都市開発の在り方について議論されました。

トップバッターの小林 正美氏は、実際自ら携わった「学生のシャレットワークショップ」を始点とした「釜石市 旧松の湯 再生プロジェクト」「姫路市大手町通り再開発」などを例題に、市民や行政とのやり取りを通し変化していくプロジェクトの様相を紹介。地方都市によっては、行政で抱えている職員に技術者が少ないことが実情としてあり、大学の研究室がトリガーとなって、プロジェクトをサポートしていく重要性を説きました。

有賀 隆氏は、2100年までの未来年表を元に建築業界の10年おきの予想を提示。都市づくりとは、今だけではなく向こう何十年後の姿を見据えた計画が肝要であることを伝えられました。「小峰城跡・白河駅周辺地区」の開発では、都市スケールから生活スケールまで細かに熟考し、実際30年後のシナリオを作り進行させた例を、映像資料なども交え分かりやすく紹介しました。

西村 浩氏は、「コンパクトシティが本当に可能か?」といった視点から、地方の「まち」の実情を分析・説明し、都市再生に必要な要素を教示。参考の事例として、自身がプロデュースされた「佐賀「わいわい!!コンテナ」プロジェクト」を基に、人が集まる仕組みを作り、賑わいを創生するといったまちづくりの手法を提示しました。また、今後のまちづくりの問題を学生の皆さん自身が解決するため、「時代にあった方法を発明してほしい」と伝えられました。

その後の議論では、司会の前田 英寿氏が、より学生達が理解しやすいような質問をパネラーに投げかけ、各パネラーは討論の補完や事例の背景などを説明しました。その後学生との質疑応答が行われましたが、今後の方向性を尋ねる質問については、まちづくりへ携わるためには大学で学ぶ内容はもちろん、「人の動機やビジネスとしての視点など、その対象地域にいる人々のベネフィットを含め、施策を提案できるようになってほしい」「そのための下地を作る意識をもって、街に繰り出してほしい」などの意見があげられました。

質疑応答後には、コロンビアから帰国し、直接会場に駆けつけた小林 英嗣氏の講演が行われました。 現在コロンビアのメデジン市の都市再生に携わる同氏。日本とはかけ離れた治安の悪さや貧困・人権問題を抱えたまちづくりは、社会問題の整備からスタートしたとの経緯を提示。その後メデジン市で実施した事案を紹介しました。過酷な環境化でスタートさせた、学生とのワークショップを通じて感じたことは、建物や設備を造るといったことだけではなく、社会再生という視点で幅広いジャンルを学生たちが学んで携わっているということ。「世界の問題が山積しているエリアにいけば、社会貢献の場は多くある。是非目を向けてほしい」と学生たちに提言し、トークイベントを締めくくられました。

審査・表彰

3月1日(日)は、芝浦キャンパス1Fホールに展示してある作品の中から巡回審査に経て、各作品に投票し最終審査に選出する作品を決定。選出作品のプレゼンテーション、審査員による講評・投票を通じて、各賞を決めていくという形式で審査会が進行されました。

10:00~13:00まで審査員による巡回審査が行われました。出展者は、作品の傍らに立ち、審査員の質問に答えながら、作品のプレゼンテーションを行います。
テーマの「際」という性格上、各大学のチームごとに様々な提案が並び、審査員からは場所の選定の理由や、周囲の環境、計画の詳細を問う質問なども飛び交い、答えに窮しながらも、用意したプレゼンボードや資料、模型を交えて説明に注力している様子が各所で見られました。

巡回審査後、審査員の投票にて上位5作品を選ぶ形式で進行。会場を8Fに移し、公開開票された結果、同票が並んだため、上位8チームが最終審査に進みました。

■特別審査員

小林 英嗣氏
(特別審査員長)

小林 正美氏

前田 英寿氏

西村 浩氏

■審査員

山本 俊哉氏

金尾 朗氏

桑田 仁氏

遠藤 新氏

中津 秀之氏

小川 宏樹氏

土田 寛氏

中村 純氏

田中 健介氏

■実行委員長

中野 恒明氏

■最終審査選出作品

作品名 大学名
「城と町の間から~お堀端通りの顕在化~」 工学院大学Aチーム
(天貝 悠さん・右田 萌さん・伊豆 拓也さん・大平 裕貫さん・喜多 英明さん・栗城 智也さん・和田 健さん・齋藤 友博さん・奥泉 伶太さん)
「都市を賦活する四つの景」 早稲田大学Cチーム
(小松 萌さん・矢嶋 優太さん)
「命を守る最後の際」 和歌山大学Cチーム
(谷村 和輝さん・山口 剛さん)
「「源泉」-沈む源泉を温泉街に届ける- 」 明治大学Bチーム
(森北 沙恵子さん・冨田 靖寛さん)
「キモノのとおりみち」 筑波大学
(小西 葵さん・Liu Shuhanさん)
「うつろいの際-おぼろげの中に節目を見出す-」 奈良女子大学
(祝 彩夏さん・近藤 裕子さん・武元 那央さん・田中 麻美子さん・長谷 美里さん)
「うつりゆく際」 和歌山大学Bチーム
(古賀 壮一朗さん・尼崎 帆夏美さん・中島 涼さん・盛田 暢利さん)
「装飾を纏う建築」 早稲田大学Aチーム
(宮崎 美紅さん・鴨下 奈央さん・久恒 光基さん・梅野 美咲さん)

最終審査は、公開審査形式で、8チームがそれぞれ作品をプレゼンテーションし、質疑応答を通じて進行しました。プレゼンテーションは、制限時間10分以内でより詳細に内容を伝える必要がありましたが、各チームとも作品のバックグラウンドや、選定理由、計画の概要・特色を工夫して発表していました。「際」というテーマの捉え方も、海や湖などの地形、歴史によって造られた建築物や設備、生活エリア、時間軸など、バラエティに富み発想力豊かな作品が並びました。

プレゼンテーション+質疑応答後、最優秀賞1作品、優秀賞2作品を決定すべく特別審査員による公開投票が行われました。特に票を集めたのは、「「源泉」-沈む源泉を温泉街に届ける-」 明治大学Bチーム、「キモノのとおりみち」 筑波大学の2作品でした。

この2作品を、さらに特別審査員が慎重に審議を行い、結果、最優秀賞に筑波大学の「キモノのとおりみち」が選出されました。優秀賞は、自動的に明治大学Bチーム「「源泉」-沈む源泉を温泉街に届ける-」、もう一作品は票を集めていた「城と町の間から~お堀端通りの顕在化~」工学院大学Aチームが選ばれました。

結果は各賞も含め、以下のとおりです。

最優秀賞
「キモノのとおりみち」

筑波大学
(小西 葵さん・Liu Shuhanさん)

京都府京都市中京区本能学区に、京染着物工房の技術継承者不足解決のための職人養成学校の創設や、京染作品の発信の場、共同工房・工場、店舗・住居などが並ぶ「とおりみち」を提案。地域の中で京染の着物の生産から消費まで行う流れを作り、京染の象徴的なエリアを創出、着物を着た人々が行き交う風景が復活することを期待した計画。

  

優秀賞
「「源泉」-沈む源泉を温泉街に届ける-」

明治大学Bチーム
(森北 沙恵子さん・冨田 靖寛さん)

八ツ場ダムの水没予定地である群馬県長野原町川原湯温泉。沈む源泉を汲み上げ、高台の代替地に届けるため、源泉塔を含む建築を計画する。川原湯温泉街の活性化をめざし、ダム事業により0からのスタートではなく、これからも川原湯温泉で在り続けるための建築設計を行ったもの。

  

優秀賞
「城と町の間から~お堀端通りの顕在化~」

工学院大学Aチーム
(天貝 悠さん・右田 萌さん・伊豆 拓也さん・大平 裕貫さん・喜多 英明さん・栗城 智也さん・和田 健さん・齋藤 友博さん・奥泉 伶太さん)

際こそ居場所ではないかという発想から、神奈川県小田原の「まちの空き地・ストリート・小田原城お堀・砂浜」というエリア間の境界を繋げるのではなく、エリアの際としてプレイスメイキングを行う。、周辺店舗、住人などの協力を仰ぎながら、徐々に小田原に際空間が広がり、街を彩ろうと考えた計画。

  

小林正美賞
「うつりゆく際」

和歌山大学Bチーム(古賀 壮一朗さん・尼崎 帆夏美さん・中島 涼さん・盛田 暢利さん)

前田英寿賞
「都市を賦活する四つの景」

早稲田大学Cチーム(小松 萌さん・矢嶋 優太さん)

西村浩賞
「五方よしグリーンエコツーリズム滋賀~琵琶湖と山を繋ぐみんなの港~」

滋賀大学(駒井 健也さん・池田 真理也さん・咲花 李歩さん・木原 湧さん・水木 翔平さん・今村 奈美さん・桂 若菜さん・町口 久貴さん・橋下 果奈さん・柳原 公弘さん・新谷 友さん)

総合資格学院賞
「うつろいの際-おぼろげの中に節目を見出す-」

奈良女子大学(祝 彩夏さん・近藤 裕子さん・武元 那央さん・田中 麻美子さん・長谷 美里さん)

特別審査員長の小林 英嗣氏は、最優秀賞の筑波大学の計画について「産業の再生や人材の育成といった点に焦点を当てたこと、また国際的にも通用するテーマになり得るものとして評価する」と語られました。最後まで最優秀賞を競った明治大学Bチームの計画について、特別審査員の西村 浩氏は「プログラムの設定地の目の付け所が素晴らしい、街の人達の大事なものを視覚化することに物語性を感じた」とこちらも高い評価を得ていました。

コンクールの最後には実行委員より来年のテーマが発表されました。第3回のテーマは「働」。
まちづくりに欠かせない重要なキーワードであるため、学生らしい新しい発想が組み込まれた様々な提案が期待されます。