第3回 2016 都市・まちづくりコンクール in 大阪
名称 | 「第3回 2016 都市・まちづくりコンクール in 大阪」 |
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開催日 | 平成28年3月19日(土) |
審査・表彰 | 平成28年3月19日(土) |
会場 | 総合資格学院 梅田校 |
審査会 審査委員 |
■特別審査員長
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実行委員長 | 中野 恒明/芝浦工業大学 教授・(株)アプル総合計画事務所主宰 |
主催 | 総合資格学院/都市・まちづくりコンクール実行委員会 |
今年で3回目となる「都市・まちづくりコンクール」は、初めて東京以外での開催となりました。
今回の開催地は大阪です。
現在、意匠系の卒業設計コンクールは全国で行われていますが、少子高齢化や地方の人口減少、大災害対策など社会が抱える問題にまで切り込んだ「都市・まちづくり」に軸足を置いたコンクールはほとんど開催されていませんでした。本コンクールは、社会に出てそれらの問題と直面していくことになる学生の鍛錬の場となり、そして同じ志を持つ仲間との交流の場として機能していくことをコンセプトに開催されています。
本年度のテーマは「働」。
皆働 、協働、実働、就働、労働、自働、稼働、働き働く。人間は元々しっかり役割分担をして生きてきました。現代は仕事が複雑になり役割の境界が曖昧になっていますが、結果的にはどれもより社会の発展、人類の発展のために役割を持って力を尽くしています。都市計画における「○働」「働き」をどのような観点から思考するのかが問われる課題となりました。また、計画の範囲の規模については、特に制限はありませんが、建築物および周辺の空間計画(環境的要素を取り入れた)を含めたものとされました。
3月19日(土)、会場となった総合資格学院梅田校には早朝より出展者が展示物を搬入し、展示および発表の準備を進めていきました。年度末が近いこの時期は、全国で卒業作品に関連する展示会やコンペが実施されます。
他の催しに出品した作品をそのまま持ち込む学生や、配送では間に合わない学生が遠方から車で持ち込んだりと、午前中は慌ただしく過ぎていきました。本年の最終出展作品は22作品。関東から九州まで広い範囲から力作・秀作が集いました。
正午から、いよいよ一次審査の開始です。2時間の制限時間の中で審査員が巡回しながら展示された作品を順次審査していき、出品者は作品の前にスタンバイし、審査員が巡回してくるのを待ちます。審査員はプレゼンボードを読み込み模型を確認し出展者に質問を投げかけ、各出展者は多少緊張の面持ちながらも、展示だけでは伝えきれない想いや、計画の裏に秘められたリサーチに基づく根拠などを熱のこもった口調でプレゼンテーションしました。
4年間の集大成ともいえる作品だけに、出展者・審査員双方の意気込みがぶつかり合うさまは、その緊迫感が聴衆にもひしひしと伝わってくるほどです。この真剣なやり取りの場は、学生にとっても代えがたい財産となるに違いありません。
規定では、最終審査へ5作品が進む予定でしたが、甲乙つけがたい白熱した選考となり、以下の7作品が最終審査に進むことになりました。
■最終審査選出作品
No | 作品名 | 大学名 |
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No.7 | 湯路を歩き、お湯見小屋を巡る ~温泉資源を利用した周遊型観光施設の提案~ | 高知工科大学 (松林 幸佑さん、北田 崇敏さん) |
No.9 | 次代の都市に暮らす ~「動く・漂う・留まる」で生まれる都市の時間~ | 早稲田大学 (宮嶋 春風さん、 小松 萌さん、 北島 明さん) |
No.11 | 人が彩るまち - 地方都市の駅前商店街における 立体的回遊性をもった中間領域の提案- | 関西大学 (長江 晟那さん、中原 比香莉さん、 阪口 友晃さん) |
No.13 | 輪郭をなぞる | 千葉工業大学 (大橋 貴洋さん、 大湊 諒さん) |
No.15 | (株)公共施設 | 明治大学 (岩田 桜子さん、 茂野 夏実さん) |
No.18 | 「沁透街巷」- 台湾台南市における都市空間の漸進的更新設計- | 東京大学 (三文字昌也さん、 下家賢さん) |
No.22 | オープンな外構が連なる街空間の提案~米軍ハウス発のサブカルチャーから新しいコミュニティーの創出へ~ | 千葉工業大学 (尾澤 佳樹さん、 吉田 有希さん、 柴田 ゆき乃さん) |
最終審査は、1チーム当たり10分間のプレゼンテーションと10分間の質疑応答で実施されました。
プレゼンテーションを通じて、パネルや模型だけでは伝えきれなかった要素がどんどん露わになってきます。そこには、それぞれのプランにかける想いや熱量が凝縮されており、如何に学生が建築と向き合い過ごした4年間が濃密なものであったかが伺えます。
膨大なデータに裏打ちされた論拠を披露する学生、身振り手振りを交えながら熱っぽくプレゼンテーションする学生、模型を用いて視覚的に理解しやすい説明を心がける学生、それぞれが考え抜いた手法で持てるすべてを訴えかけてくる姿に、人材不足や社会問題などを抱える業界に一筋の光が差し込んだような気がしました。
■審査委員
小林 英嗣 氏
中野 恒明 氏
江川 直樹氏
角野 幸博氏
山本 俊哉氏
すべての発表が終わり、審査員による審議が行われ、各賞が決定。最優秀賞は一次審査および最終審査を通じてトップ票数を集めていた「沁透街巷」──台湾台南市における都市空間の漸進的更新設計。
東京大学の三門司さんと下家さんによる出展です。台湾の都市を題材としたこの作品は、現地に長期間滞在し敷地環境を読み込んだだけあり、圧倒的な説得力を持った作品でした。他に優秀賞2作品、各審査員賞が選出されました
受賞作品
結果は各賞も含め、以下のとおりです。
受賞 | No | 作品名 | 大学名 |
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優秀賞 | No.11 | 人が彩るまち-地方都市の駅前商店街における立体的回遊性をもった中間領域の提案- | 関西大学 (長江 晟那さん、中原 比香莉さん、 阪口 友晃さん |
優秀賞 | No.15 | (株)公共施設 | 明治大学 (岩田 桜子さん、 茂野 夏実さん) |
小林賞 | No.4 | 森×郊外 | 山口大学 大学院 (山内 康平さん、下田 知輝さん、梶原 栄里佳さん) |
中野・山本賞 | No.16 | 次世代型駅前再開発 「立石呑み屋街改札口」 | 明治大学 (谷 玲香さん、五十嵐 大規さん) |
江川賞 | No.9 | 次代の都市に暮らすー「動・漂・留」で生まれる都市の時間ー | 早稲田大学 (宮嶋 春風さん、 小松 萌さん、 北島 明さん) |
角野賞 | No.7 | 湯路を歩き、お湯見小屋を巡る~温泉資源を利用した周遊型観光施設の提案~ | 高知工科大学 (松林 幸佑さん、北田 崇敏さん) |
各審査委員総評
【小林 英嗣氏】
我々の時代は、謂わば「新規性」が求められた時代でした。これから皆さんが歩んでいく時代は「過去に手入れ」をする時代です。つまり、先人がやれなかったことや、公共が犯した過ちを読み替える力が必要になります。
街づくりは、3.11を境にプロフェショナルの必要性が認識されました。あれからの五年間、このプロセスは重要な学習材料であり、しっかり実益へと転化し後世に伝えてほしいと考えます。私たち街づくりに関わる人間は、関係するすべての人々を説得するために、未来に向けた皆が分かり易いものを、時間軸に沿って説明する義務があると思います。
社会的方説という考え方があります。これは、社会を構成している全てのものに気を配り対応する必要があるという思想で、言い換えれば実社会で考えるべきフィールドは広大であると言うことです。
今日は、皆さんが広大なフィールドをどこまで考えて提案しているのかを見させていただきました。
作品レベルは年々向上していることが見て取れ、街づくりに対する意識の高まりを感じることができとてもうれしく思います。今後の皆さんのご活躍を期待します。一緒に頑張ってゆきましょう。
【中野 恒明氏】
皆さんお疲れさまでした。今日は3つのポイントを中心に審査いたしました。一つは、敷地を読み取れているかということです。その場所の持つポテンシャルだけでなく、歴史や周辺環境との関連などを含めて考えられているかということ。二つ目はどのような解を導き出しているかということ。三つ目は学生らしさがあるかということです。 どの作品にもしっかりとした意図があり、とても難しい審査でした。歩みを止めることなく進んでほしいと思います。
【江川 直樹氏】
感想ですが、とても良かったのは多様性があったということです。様々な視点からの社会に対する提案があり、とても有意義な時間でした。それぞれに、こうすればもっと良くなるという改善点がありますが、それは懇親会で大いにやりましょう。
最終審査に進めなかった作品の中に大きな可能性を秘めていると感じる作品がたくさんありました。私は、街づくりでとても重要なのは、機能主義に依らず街のポテンシャルを引き出せるかどうかだと考えてます。少し格好よく「街の声を聴く」なんて言ったりしてますが、この点を軸に心に響いたものを選ばせていただきました。
【角野 幸博氏】
私の審査基準は、街の魅力を読み取れているか、どの様に良くしようと考えたか、プロセスはどうなのか、住民に分かり易い提案となっているか、この4点でした。学生の街づくりコンクールは初めて見させていただきましたが、出展作品を見て非常にレベルが高いと感じました。街づくりの視点がしっかり活かされていました。
【山本 俊哉氏】
1回目からすべて関わらせていただいていますが、過去は東京での開催でした。初めての大阪開催となり期待と不安がありましたが、今まで出展がなかったエリアからの応募もありとても良いコンクールとなりました。本コンクールのように、学年に関係なく戦う場はとても珍しいですし、存在意義の一つはそこにあるんじゃないかなと思います。
今回は学部2年生が参加したチームもありましたし、今回の経験を活かして作戦や考えを練って、来年再来年とチャレンジして欲しいと思います。街づくりは、リアルと向き合えば向き合うほど、実現までの壁がより高く険しいものに見えてきますが、あまり気圧されてこじんまりまとまらなくても良いと思います。既成の何かを変えるという気概を持ってチャレンジしてください。